「 ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学」読んだ

読んだ。以下自分の頭に残った点。

経営学の使い方

理論研究から ある法則が一般的にあてはまりやすいかどうか 思考の羅針盤として使われるべき。

MBAの教科書がアップデートされない原因

数十年ぐらいMBAの教科書は大きくアップデートされてないそう。以下のような理由によるらしい。

  • 経営学の研究者は新しい知を生み出し、評価の高い経営学の学術誌(Aジャーナル)に掲載される事が評価につながる。学術的な知見のツール化は学術実績として認められない

  • ビジネススクールは実務家を対象としているので、学術的な理論ではなく実務で使えそうな基本的なツールを紹介している。

  • 経営学者にはツール化のインセンティブがないので、研究が進んでも教科書には反映されない。

上記からアップデータされないんだそう。

一方でハーバード・ビジネス・レビュー、MIT Sloan Management Reviewなどは実務家向けの雑誌なので、経営学者の評価にはつながらないものの、研究で得られた知見を実務に橋渡しする論文もあるので読んだ方が良いそう。

評価の高い経営学の学術誌(Aジャーナル)

  • Journal of International Business Studies

  • Strategic Management Journal

最近アカデミーオブマネジメントにより創刊された学術誌「Academy ob Management Discoveries」は「Practically useful」と「Regorous」を追求することを目指しているそう。

経営学の科学化

世界の経営学は社会科学の側面を重視しているそうで、統計分析や実験、コンピューター・シミュレーションで仮説が正しいかを確認している。一方でインタビューなどの定性調査を実施する事例分析も必要だそう。

たしか「なぜビジネス書は間違うのか」という本の中で「ヴィジョナリーカンパニー」は良い事書いてあるけどアンケートによる調査なのでハロー効果の影響を払拭しきれておらず、科学的では無いと書かれていた。

メタ・アナリシス

過去の統計分析の結果をさらに総括する手法。例えばダイバーシティと組織パフォーマンスの関連についての論文が100本あったとして、50本が良い影響がある、50本が悪い影響があるという結果が出ていたとする。 その場合に100本の論文全てに対して改めて統計的な分析をする手法。

市場の型によって戦略を変える

戦略

  • ポーターの競争戦略(SCP戦略) 代表的なフレームワークはポジショニング戦略で、競合と比べてどのような製品・サービスを提供していくかをかんがえる。ポジションは「差別化戦略」とコスト削減の「コストリーダーシップ戦略」に分かれ、両方を同時に実現するのは難しいと言われている。

  • リソースベーストビュー(RBV) 「企業の競争優位に重要なのは、製品・サービスのポジションではなく、企業の持つ経営資源(リソース)にある」とする考え方。 経営資源の代表例は人材や技術。

  • リアルオプション 投資の柔軟性を高めよう、とするやり方。例えば部分的に投資し、成功しそうになったら全力で投資するなど。リーンスタートアップが近いのでは。

市場

  • IO(Industrial Organization)型 参入障壁が高い、寡占、緩やかに差別化されている業界。 SCPが有効。参入障壁をどう上げるか、ポジショニングどうするかが問題。

  • チェンバレン型 参入障壁が比較的低く、ある程度差別化しながらそれなりに競争する業界。 自社の技術力やサービス力に注目するRBVが有効。

  • シュンペーター型 ITなど、不確実性が高い、技術の進歩が早い、ニーズが変化しやすい業界。 SCPやRBVは競争環境や自社のリソースは当面変化しないことを前提としているので通用しない。 リアルオプションが有効かもしれない。

ダイバーシティと組織パフォーマンスについて

ダイバーシティには2種類ある。

  • デモグラフィー型 性別、国籍、年齢など。

  • タスク型 能力、経験の多様性

デモグラフィー型のダイバーシティは組織パフォーマンスを低下させ、タスク型は向上させる。

フォルトライン理論 組織内グループの境界線。デモグラフィーが多次元で多様であれば組織内の軋轢が減り、組織パフォーマンスが高まる。

中途半端なダイバーシティはフォルトラインが発生してしまうのでマイナスになる。

「みんなの意見」は案外正しい」という本に小さな集団でもダイバーシティは大切だと書いてあった気がする。 同質的な集団だと今までうまく行っていたやり方が通用しなくなった時に誰も答えを持っていない為ダイバーシティが重要だと理解していたが、小さな集団でも同質性が高いと間違った結論を出してしまう確率が高くなってしまう為重要だということだった。ダイバーシティが高くても一人の人の発言力が特に強い場合は無意味だとも書いてあった。これはワンマン社長とその他大勢の経営陣の関係を想像するとわかりやすいと思う。

内発的動機と外発的動機

モチベーション3.0でも同様の内容が書いてあったきがするけど、外発的動機(給料や評価など)より内発的動機(やりがいなど)が効果的なんだそう。

某経営者が書かれた本に成果が出たら給料が上がる形のメリハリのある制度が良いと書いてあった記憶があるが、これによるとその制度はマイナスになる。 このあたりは生存者バイアスと言えるのではと思う。

ちなみに経営学者は1流の論文紙に掲載される事により評価されるとのことだが、それは外発的動機なんじゃないかと思った。